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□もしもヒロインがグルメカジノの景品だったら
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【Sirena3のIf話です。もしもヒロインが先に海で復活していて、しかもグルメカジノに捕らえられてグルメテイスティングの『食材』になってしまっていたら・・・】


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ライブベアラーを相手に始まったグルメテイスティング。

共感覚を武器に次々とヒットを出すココと、明らかなイカサマで高ポイントのカードを当てていくライブベアラー。

勝負は中盤、ハズレカードを確認する為わざとカードを外したココにニヤリと笑ったライブベアラーが、わざとらしく「そうそう」と語り始めた。


「あなたたちってば、本当に可哀想。よりによって今日は『最悪のハズレカード』が二種類も入っちゃってるみたいね」

「最悪のハズレカード?」

その不吉な名称に小松が不安げに聞き返す。

「そ♪」

ベロリ、と舌なめずりをしながら小松を見つめたライブベアラーは「それだけは当てちゃいけない、超特殊調理食材のカードよ」と説明を続けた。


「いまだかつて誰も調理に成功した者がいない食材なの。ポイントは最低の10ポイント。はっきり言っておくわ。それをヒットすることは即敗北を意味するのよ」

そうニタリと笑ったライブベアラーは「あ、21番をお願い」と言って指示した手札をオープンさせると、現れたポイズンポテトのカードにわざとらしくあらぁ!と叫んだ。

「いやだ、私ったら、うっかり開けちゃったわ。じゃあ53番」


すぐさまもう一つの番号を指示したライブベアラーは現れた別の種類のカードを見ると「もう、私ったらイヤね」と赤みがかったほほを歪ませて笑った。


「一気にハズレカードを二種類もあけちゃうなんて、危ない危ない♪」


そのわざとらしい台詞を受けて、司会が交代のアナウンスを告げる。


『お〜っと、ライブベアラー様、ここでヒットならず!手順がココ・トリコ・小松チームに移りま』


「ちょっと待った!」


しかしその言葉が終わる前に、カードを指さして、トリコが驚愕に目を見開きながら叫んだ。


「てめぇ、なんだそのカードは?」

隣で一緒に驚く小松の様子を眺めながらライブベアラーがいやらしい笑みを深める。


「いやだ、トリコちゃんってば耳が遠いの?さっき言ったでしょ?超特殊調理食材『マーメイド』よ」


ココも含め3人が凝視するその先には、美しい、しかし下半身は魚の様相をした女性が描かれたカードがあった。


「え?これって、え?もしかして、まさか…」

小松もまさかの可能性にココを覗き見る

ココは微動だにせず、先程から例のカードただ一点のみを見つめ続けている。


「あらぁ?もしかして興味持っちゃった?無理もないわね。未知なる味を探求したいのは美食屋の性。でもね、悪いことは言わないからやめときなさい」


負けるのは、もっともっとアタシを楽しませてからにして頂戴ね


そんな事を言いながらライブベアラーは新たに当たりカードを引き当て、なんなくそれを調理・完食する。



「マーメイドはね、誰かが触れただけで泡になって溶けてしまうの。もちろん死んじゃう訳じゃないのよ。2、3日すると元に戻ってるんだから。でもダメ、マーメイドのポイントは10ポイント。制限時間の10分以内に調理も完食もできないんだから、その時点でアウトなの」


うふふ、ついこの間入荷したうちの目玉食材なんだけどね、と調子に乗って聞かれてもいない事まで喋り続けるライブべアラーは、次の瞬間我が耳を疑った。


「28番。それと、53番を」

「ちょっと!あなた正気なの!?」


見事マーメイドのカードを2枚当てたココは、真剣な眼差しで立ち上がると「ここはボクが行く」と別室へ移動を始める。

トリコモ小松もそれに関しては特に異存はないようだ。

「まさか、四天王ココ…、あなた、知っているとでもいうの?マーメイドの調理方法…」


ココはそれには何も答えず、静かに食材保管庫へと移動していった。




「まぁいいけどよ。なんだこりゃ?どうなってんだ?」

トリコはモニターを一応確認しながらボリボリと頭を掻く。


「ええと、詳しい事情は僕もよく分かりませんが、多分ここはココさんに任せておけば大丈夫なんじゃないでしょうか?」


それにしても、なんだってこんなところにいらっしゃるんでしょうね?なんて呑気に首を傾げる小松の様子に、ますますライブべアラーは困惑する。


「なに?どういう事?まさか、あななたち…。いえ、そんな。マーメイドは存在自体が謎の食材。その調理方法はあの闇の料理人でさえまだ解明出来ていないはず」


詳しい事情を聞き出そうにも、トリコモ小松もモニターをのぞき込んだまま動かなくなってしまった。
しかたなくライブべアラーもモニターへを視線を移す。

モニターは、小さな部屋へと切り替わっていた。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


ココがその部屋に入ると、その中央には3メートル四方のアクリル版でできた水槽が鎮座されていた。

その中になみなみとたたえられた海水の中、水槽の端に掴まって入口に背を向けたマーメイドは、緑のような青のような色をした尾ひれをゆらゆらさせながら、入室者をチラリとも見ずに忠告した。


「先に言っときますけど、私に指一本でも触れたら、消えますから。それであなたがどんな目に会うのか分かりませんけど、こっちだって命がかかってるんですから怨みっこなしですよ」



「それは困るな」


その声がそう広くない室内に響きわたった瞬間、尾ひれの動きがピクリと止まる。


「また君を失うのは、さすがにもう耐えられそうにない」


わなわなと、震える唇がおそるおそる入口を振り向く。


「遅くなってすまなかったね」


そういって水槽まで辿り付いたココが優しく微笑むと同時に、尾ひれをひと振りしただけで水槽の端から端まで移動してきたマーメイドが、水槽の縁を両手で持って、おそるおそる水面から顔を上げる。


「コ、ココ…さん?」


「うん」


その濡れた頬を優しくそっとひと撫でしてから、ココは自身が濡れるのも構わず人魚を捕獲し調理室へと向かった。


「え?あの?」

「しっ。静かにしてて」

「はい?」

「積もる話は沢山あるけどね、実はあと10分しかないんだ」


なにせ君は10ポイントだからね


「は?10ポイント?」


グルメテイスティングのルールを知らないおとぼけ人魚はきょとんとした顔をして首を傾げる。


「トリコ、隣の調理室を使う。モニターを全部切っておいてくれ」

「あの、ココさん?誰に話しかけてるんですか?」

「うん?あぁ、大丈夫。もう済んだから」

「へ?あの、何がなんだかさっぱりなんですけど」

「とにかくここはボクに任せて。後で全部説明するから、ね?」


そうやってとろける様な微笑みと共に甘い声で囁かれては、彼女はもう素直に「はい」と返事をするしかない。


そうして、調理室へと続く扉はぱたりと閉じられ、そしてきっかり10分後に再び開く。


そこには真っ赤なゆでダコのような顔をしてココのジャケットを身に纏い、上機嫌なココに抱かれてディーラーズルームへと連行される元人魚の姿があった。



その後、幸せそうに彼女を膝に乗せたココが「おかげさまで美味しく頂いたよ」なんて感想をライブべアラーに言って彼女のビンタを食らったのは言うまでもない。



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